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ハラスメントにならない「グレーいじめ」対策はこれだ!①


私はこれまで多くの研修に登壇し、多くのテーマについて講義をしてきた。

私は社会保険労務士なので、ハラスメントは良く取り扱うテーマの一つである。

今年の1月15日に官報に掲載された通称パワハラ防止法の措置指針によって、企業や組織はそれに対応するための施策をいろいろ考え、手を打っている。今後は誰から見ても明らかな「ハラスメント」は少なくなるだろう。

 

では、職場から「いじめ」は本当になくなるだろうか。

そんなことはあり得ない。

いじめはどんな状況になっても、必ずどこかで行われる。

 

・弱いやつをいじめると気持ちいい。

・将来、脅威になる奴は早めに潰しておきたい。

・自分の力を見せつけて子分を増やしたい。

 

などの本能的な欲求は程度の差こそあれ、多くの人が持っている。

人間と言っても、所詮は動物+α。

弱肉強食とは言わないまでも、欲求や力の強い者が、そうでない者を虐げようとするのはある種自然の成り行きである。

 

私は研修講師として、この数年間多くの登壇をこなしてきた。

当然ハラスメントに関する研修も多く受け持ったが、受講者からはほぼ100%受ける質問がある。

それは

「どこまでやったらアウトですかね」

という質問だ。

皆さんはこれを聞いてどう思うだろうか。

 

私はこの「ハラスメントの境界線」というテーマについて何度も訊かれるうちに分かったことがある。

それはこの質問をする人のタイプが二つに分かれており、こちらの答え方も変えなくてはならないということだ。

ひとつは、

「自分はそのつもりはないが、誤解されると職場の雰囲気が悪くなって困るから」

というマイルドなタイプ。この人たちには一生懸命励まし、「たまにはガツンと言っていいですよ」というアドバイスをする。

もうひとつは、

「どこまでだったら許されるのか、それを会社公認の研修講師(社労士)に尋ね、言質をとっておきたい」

という計算高いタイプである。

後者の人の特徴は、眼光鋭く、声も低く、質問の際に表情がない。

能力は高く、組織内のポストもそれなりに高い。

だが、多少の笑顔があっても、目は笑っておらず、詰め寄るような断言口調で明確な答えのみを求めてくる。

そして私にはなぜか、高圧的な表情の中にある種のいやらしさがあるように思えるのだ。

 

そもそも、このタイプは正直私たち講師のことなど、尊敬もしていなければ、ハナから言うことを聞くつもりもない。

ただ、こういう場で言質を取っておき、なにかあったときの言い訳や、アリバイとして利用するためだけに質問をしている。

つまりこの人たちは、いじめる気満々なのである。

そういう人には、言質を取られないよう注意しながら

「厚労省のホームページなどをご参考にされては?」

ということにしている。

 

私が何を言いたいのかもうお分かりだろう。

彼らには、「ハラスメントの境界線の下をくぐり、言質(証拠)を取り、他者やルールを利用しながらペナルティを受けることなく、相手を思い通りに動かす」というはっきりとした意思があるのだ。そしてその意思は強く固い。

 

彼らが行ういじめは、誰もがハラスメントと断言できないレベルを上手く維持し、高度化、巧妙化された「近代いじめ」である。

これをここでは「グレーいじめ」という。

グレーと言えばなんとなく軽い感じがするが実際は全然違う。

内容としては真っ黒も真っ黒。

いじめられる側にとっての負担は激しく、長期にわたり実行されることで、消耗しきってしまい自ら退職の道を選ぶことも多い。

 

これからは、この「グレーいじめ」を今受けている人たちに対し、どう対策を立て、どうしたら自分の職場での人生を幸せなものにできるのか、をお伝えしたい。

こんなところで偉そうなことを言っている私だが、私の職業人生も「いじめ」の連続だった。

「弱い者いじめ」から「出る杭は打たれるいじめ」までいろいろあった。

しかし、いずれも克服してきた。

そして最後の方は「いじめ」が来たときも動じなかった。というよりむしろ私は、

「この人はえらい古い手やな。前に受けたヤツの方が手も込んでたし、もっとレベル高かったで」

とか思っていた。

 

今困っている人の役に立つ情報をこの後もどんどん出していきたい。

ぜひ悩んでいる人がいたら、教えてあげてほしい。

この後、成功率が非常に高い方法を二つほど紹介する。